【東工大2022数学問2】整数問題と対象式の解説!

受験数学SetUpでは、赤本や各種サイトのわかりにくい解説を直し、どこよりもためになる解説をしています。

今回のポイント

  • 対象式の扱いに慣れる
  • 互いに素の条件に慣れる

問題

3つの正の整数\(a, b, c\)の最大公約数が1であるとき、次の問いに答えよ。
(1) \(a + b +c , bc + ca + ab, abc \)の最大公約数は1であることを示せ
(2) \(a+b+c, a^2 + b^2+ c^2, a^3+b^3+c^3\)の最大公約数となるような正の整数を全て求めよ

問1 証明のゴール設定と式の形から過程をイメージ

問1はよくある証明問題です。
「最大公約数が1である」や「互いに素」の証明は直接証明しようとすると難しいので対偶や背理法を利用するのがスムーズです。
理由は、互いに素を式にするのは難しいですが、互いに素ではないとすると、素因数\(d\)を用いて\(x = dk (kは整数) \)と表すことができるからです。
ちなみに、この\(d\)が素因数であることは重要です。

そして、 \(a + b +c , bc + ca + ab, abc \)を見ると3次方程式を絡められそうなのがわかりますね。そうです、解と係数の関係です。

これをイメージしたうえで証明してみましょう。

\(a + b +c , bc + ca + ab, abc \)が1でない最大公約数を持つと仮定すると、素因数\(p\)とし、自然数\(l,m,n\)を用いて用いて以下のように表せる

\(a+b+c = pl\)
\( bc + ca + ab = pm\)
\(abc = pn \)

さて3次方程式の解の係数の関係はこうでした

3次方程式の解の係数の関係

3次方程式\(a^3 + bx^2 + cx +d =0\)の解を\(\alpha, \beta, \gamma \)とすると
\(\alpha + \beta + \gamma =  \dfrac{b}{a} \)
\(\alpha\beta + \beta\gamma + \gamma\alpha= \dfrac{c}{a}\)
\(\alpha\beta\gamma = – \dfrac{d}{a} \)

今回は問題に合わせて、\(\alpha, \beta, \gamma\)を\(a,b,c\)に置き換えて考えましょう。

3次方程式の解と係数の関係の関係から、\(a, b, c\)は
\(x^3 -plx^2 + pmx – pn =0\)
の解になる。つまり、

\(a^3 -pla^2 + pma – pn =0\)
\(\therefore a^3 = p\(la^2 – ma + n) \)

pが素因数、つまりa, pが互いに素であることから、\(a^3\)は\(p\)の倍数になります。\(a, p\)が互いに素であれば、\(a\)も\(p\)の倍数になります。

同様に、\(b, c\)について考えると、やはりpの倍数になります。

つまり\(a,b,c\)がpの倍数になるが、これは仮定の\(a,b,c\)の最大公約数が1であることに反しますね。つまり、 \(a + b +c , bc + ca + ab, abc \)の最大公約数は1であることが証明されました。

問2 対象式の定番式変形と問1の利用を考える

(2)は対象式です。対象式は文字を入替ても元の式と同じになる式のことを言います。
対象式は各文字の単純な和と積で表すことができます。
式変形をしてその式から評価していきましょう。

\( x = a + b + c, y = ab + bc + ca, z = abc\)として

\( a^2 + b^2+ c^2 = (a + b+ c)^2 – 2(ab + bc + ca) = x^2 -2y \)
\(a^3+b^3+c^3 = (a + b +c)(a^2 + b^2 + c^2 – ab -bc -ca) + 3abc = x^3 – 3xy + 3z \)

最大公約数を\(d\)としたとき、
\(\dfrac{a+b+c}{d}, \dfrac{a^2 + b^2+ c^2}{d}, \dfrac{a^3 + b^3+ c^3}{d} \)すなわち
\(\dfrac{x}{d}, \dfrac{x^2 – 2y}{d}, \dfrac{x^3 – 3xy + 3z}{d} \)が整数になる必要があります。

\(\dfrac{x}{d} \)が整数であるとき
\(\dfrac{x^2 – 2y}{d} = \dfrac{x^2}{d} – \dfrac{2y}{d} \)
つまり\(\dfrac{2y}{d} \)が整数になる必要があります。

また\(\dfrac{x^3 – 3xy + 3z}{d} = \dfrac{x^3}{d} – \dfrac{x}{d}3y + \dfrac{3z}{d} \)
つまり \(\dfrac{3z}{d} \)が整数である必要があります。

なので、結局\(\dfrac{x}{d}, \dfrac{2y}{d}, \dfrac{3z}{d} \)が整数になる\(d\)を探せばいいということになります。

(i)\(d\)が2,3以外の素数\(p\)であるとき

x,y,zは\(p\)の倍数になりますが、これは仮定x,y,zの最大公約数が1であることに反します。

なので考えられるdの候補は係数である2,3の積の組み合わせ、つまり
\(d = 2^s \cdot 3^t \)になります。

\(\dfrac{x}{2^s \cdot 3^t}, \dfrac{y}{2^{s – 1} \cdot 3^t}, \dfrac{z}{2^s \cdot 3^{t-1}} \)

\(s \geqq 2\)のとき

\(y\)は2を素因数に持ちます。
残りの分数が整数になるためにも、\(x, z\)が2を素因数に持ちます。
しかしこれも過程に反していますね。

\(t \geqq 2\)のとき

\(z\)が3を素因数に持ちます。
先ほど同じく、残りの分数が整数になるためにはやはり\(x,y\)も素因数3をもち、これは仮定に反します。

なので、\(s, t = 0,1\)であることがわかりました。なので組み合わせは\(d = 1, 2, 3, 6\)が候補になります。実際にこれを満たすa,b,cが存在するかをチェックします。

\( (a,b,c) = (1,1,1)\)のとき
\( (a+b+c, a^2 + b^2 +c^2, a^3 +b^3 + c^3) = (3, 3, 3), d = 3 \)

\( (a,b,c) = (1,1,2)\)のとき
\( (a+b+c, a^2 + b^2 +c^2, a^3 +b^3 + c^3) = (4, 6, 10), d = 2 \)

\( (a,b,c) = (1,1,3)\)のとき
\( (a+b+c, a^2 + b^2 +c^2, a^3 +b^3 + c^3) = (5, 11, 29), d = 3 \)

\( (a,b,c) = (1,1,4)\)のとき
\( (a+b+c, a^2 + b^2 +c^2, a^3 +b^3 + c^3) = (6, 18, 66), d = 6 \)

このように実際に条件を満たすa,b,cが存在しています。

なので、最終的に求める最大公約数は1,2,3,6と答えられました。

整式と最大公約数に関する裏話

少し今回の点で裏話をします。(2)の対象式を変形してみます。

\(a^2 + b^2+ c^2 = (a + b+ c)(a + b+ c) – 2(ab + bc + ca) \)
マイナスがあったりと厳密ではありませんが、\(a = bq + r\)という割り算の形になっていますね。

つまりユークリッドの互除法を考えることができます。

\( a^2 + b^2+ c^2とa + b+ cの最大公約数は、a + b+ cと2(ab + bc + ca)の最大公約数に等しい\)
というのが見えてきますね。
事実余りがマイナスでも絶対値を取って計算することもできるので、答えとしては合っています。

また、
\(a^3+b^3+c^3 = (a + b +c)(a^2 + b^2 + c^2 – 2ab -2bc -2ca) + 3abc \)
これも同様に考えて、
\(a^3+b^3+c^3 と a + b +cの最大公約数は a + b + cと 3abcの最大公約数に等しい \)

これらをまとめると、\(a+b+c, a^2 + b^2+ c^2, a^3+b^3+c^3\)の最大公約数を求めることは、\(a + b+ c, 2(ab + bc + ca), 3abc \)の最大公約数を求めることと同じになります。

これはまさに、\(\dfrac{x}{d}, \dfrac{2y}{d}, \dfrac{3z}{d} \)が整数になる\(d\)を探すという先ほどの解説そのものです。

実際は負の数を扱っているため厳密な議論が必要なのですが、このような考え方もできると答えの道筋を立てやすくなりますね。

というわけで、正式の問題でした!

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